PLAZAインタビュー「俳優 藤木直人さん」
PLAZA INTERVIEW vol.027 芸能の原点で演技にも音楽にも
ご存知、当代きってのいい男。大学在学中にファッション雑誌の読者モデルに応募したことがきっかけで芸能界に入り、1995年の映画『花より男子』でデビュー。理工学部情報工学科で数学を専攻しながら、同年、テレビドラマでもデビュー。大学卒業後は、NHK大河ドラマ『徳川慶喜』や朝の連続テレビ小説『あすか』を初めとして、『ナースのお仕事』(フジテレビ)『ホタルノヒカリ』(日本テレビ)、映画『20世紀少年〈最終章〉ぼくらの旗』(東宝)など、多くのテレビドラマや映画に出演してこられた。一方で、1999年からは音楽活動も開始。ライブやCDではギターに加えて、ピアノやトランペットも演奏することがあるという多才ぶりを発揮する。
音楽の原点は、高校のときに触れたBOOWY時代の布袋寅泰さんのギターと熱く語る藤木さんに、『おしゃれイズム』収録前の忙しいなか、俳優業15年の足跡と「死ぬまで弾き続ける」というギターへの思いを語っていただいた。
俳優 藤木直人さん
1972年岡山県生まれ。早稲田大学在学中にデビュー後、テレビドラマでは『徳川慶喜』(NHK)など、映画では『劇場版TRICK霊能力者バトルロイヤル』(東宝)など、数多くの作品に出演してきた他、『おしゃれイズム』(日本テレビ)ではレギュラーパーソナリティをつとめ、『冬の絵空』で舞台にも立った。その傍ら、高校時代から熱中してきたギターを中心に音楽活動にも活躍の場を広げている。2004年第27回日本アカデミー賞新人俳優賞『g@me』などの受賞歴がある。
一つひとつのドラマを通して
―― デビューは映画の『花より男子』でしたが、大学4年在学中だったですね。理工系の学部だったようですが、学業との両立は大変ではなかったですか。
高校の時から、こういった芸能の世界にあこがれていたところがあって、大学4年間のうちに何かきっかけがつかめればいいなって考えていたんです。だから、あまり積極的な大学生ではなかったんです(笑)。それで、芸能界という目標にたどり着けたし、大学もやめようかなと思ったんですけど、親や同級生から「卒業だけはしたほうがいい」って言われて、なんとか卒業させてもらいました。
―― その後、本格的に芸能活動に入られるのですが、これまで出演された多くのテレビドラマのなかで、印象に残っているものはありますか。
僕の場合、役者としてちゃんと勉強したこともなかったので、どの作品も僕にとってはすごく大きな意味のあるものだったんです。
―― 一つひとつのドラマなどをやってこられることが、ご自身の血や肉になっていったと。
そういう点では、僕は一歩一歩がすごくゆっくりだったと思います。ただ、NHKの朝の連続テレビ小説のときは制作が大阪NHKだったので、仕事のために半年大阪に行ってというのは感覚も違ったし、ベテランの方たちも多かったですし、より幅広い方に見てもらうチャンスでもあったと思います。
―― NHKでは、大河ドラマ『徳川慶喜』にも出演されていますよね。
大河ドラマは、大変でしたね(笑)。まだ「演技」もわからないし、現場の進行も全然わからないような状態で、それなりに大きな役を与えて下さったんですけど、期待にはあまり答えられなかった気がします。でも、撮影が始まる前に他の役者さん方と一緒に道場で殺陣の稽古をしたり、所作指導を受けて着物や袴での歩き方、座り方などを教わったんです。それは当然、簡単に身につくものではないのですけど、そうやって勉強させてもらうのはすごく新鮮で、ありがたかったです。
―― 映画にも何本か出演されていますが、テレビドラマと映画の違いのようなものは感じますか。
僕はまだ、いわゆる「何々組」というような、生粋の映画人が作るような映画撮影の現場にはほとんどいったことがないんです。そういう映画にも出られるよう、今後がんばっていかなきゃいけないと思っています。
―― 本格的な映画もやってみたいと。
テレビドラマって、どうしても時間に追われるじゃないですか。スケジュールが最初から分きざみで入っていて。でも、一番大事なのは良い作品を撮ることなのだから、そんなこと考えずに、良い作品を撮ることを優先してやれるような創り方でやってみたいという気はあります。
高校のときギターに触れて
―― ところで、野球のイチロー選手のファンだと伺いましたが。
はい。とびぬけた、圧倒的な才能へのあこがれなのかなと思います。それと、常に向上心を持ち続けて体のケアを怠らないというような、ストイックな部分もあこがれますね。一挙手一投足に無駄がないっていう感じがするんです。無駄なものをそぎ落としてたどり着いた、機能美みたいなものを感じますね。
―― ご自分でもそういうところに近づこうと・・・。
イヤイヤ。無理だからあこがれるんです(笑)。
―― ご自身は、俳優業を始められたあと、音楽のジャンルでも活躍されていますね。布袋寅泰さんにあこがれてギターを始められたとか。
もともとBOOWYのファンだったんです。僕自身は音楽にうとかったんですけど、高校1年のとき、双子の兄が解散したBOOWYのライブビデオを借りてきて初めて知ったんです。初めてロックに触れたので、すごく強烈でした。それから兄貴とBOOWYごっこをやってました。テニスラケットをギターの代わりにして(笑)。
―― 初々しい感じですね。
高校2年のときにヘビメタのギターをやっている人がいて、BOOWYの「マリオネット」っていう曲のイントロのリフを弾いてくれたんです。それを聞いたとき「あ、BOOWYと同じだ」と。僕は小学校のときに吹奏楽のトランペットをやったことはあるし、家にピアノもあったんですけど、エレキギターは今までの楽器と全然違うっていう感じを受けたんです。そのあとすぐギターを買って、1日中弾いてる感じでした。まずはBOOWYのコピーから。本当に「ギター小僧」でしたね。そのころは漠然と、「いつかギタリストになりたい」と思ってました。
―― 吹奏楽の楽器などと違う、高校で出会ったギターの魅力は何だったのでしょうか。
それまでの音楽は、学校で習うよう音楽じゃないですか。そうじゃないある種ファッション的な要素であるバンドというものに初めて触れて、興味を持った。そこにつながるツールがギターだったんです。それに、高校生のころって何でも熱中できる時期で、夏休みなんか1日8時間ぐらいギターを弾いてました。弾きすぎて指の先に水ぶくれができ、皮が破れて血が出ても弾いてました。そこまでがんばってやっていくと、表現できることが増えていくのがまた楽しくなったりするんですね。
―― その後は、作曲もされていますが、どういうときに曲ができるのですか。
やっぱり、楽器に触っているときが多いですね。コードを適当に弾いていて、コードに刺激されて思いつくっていうのが一番多いと思います。でも、ドレミファソラシドなんて8音しかなくって、コード進行だってだいたい似ていて、いままでにないものを創りだすのってやっぱり難しいですよね。本当にたまに、パーっと新しいものが見える瞬間があったりすると、気持ちよく曲ができたりします。
ライブと舞台に通じるもの
―― ライブ演奏とスタジオでの録音では、どちらが好きですか。
やっぱりライブですね。ライブならバンドの仲間がいて、どういうふうに創っていこうかという話し合いもあるし、拙いですけど僕もギターを弾かせてもらえますしね(笑)。
―― でも、ライブは大変でしょうね。
大勢の人の前で何かをするというのは、大変です。でも、お芝居もそこが原点だと思うんですよ。テレビドラマだと、視聴者が見ていないところで撮って、それをつないで見てもらって、反応も全然わからないわけですけど、ライブをやると、こういうことが芸能の原点なんだって気づかせてもらえます。2年ほど前に初めての舞台をやらせてもらったときも、音楽のライブに通じる部分がすごくあると感じました。
―― 俳優としてデビューされて15年、音楽活動も10年やっていらっしゃったわけですが、これからもこういうスタイルを続けていこうと考えていらっしゃいますか。
それは、続けたいですけど需要がないとできないですからね(笑)。役者業は何も知らないで入って、気がついたらこんなに長い間やってきて、それなりに現場で思うこともあるようになったので、今後も続けていきたいと思っています。音楽は、やっぱりバンドなんかで音を出すっていうのがすごく好きなんです。ギターを弾くっていうことが、手足の一部みたいな感じです。ギターは死ぬまでやめないですね。需要がなかったら、趣味のバンドになっていくわけですけど(笑)。
―― 需要はこれからますます高まっていくと思いますので、ぜひ音楽も続けていってください。今日はテレビ番組収録前のお忙しいなか、ありがとうございました。
ご存知、当代きってのいい男。大学在学中にファッション雑誌の読者モデルに応募したことがきっかけで芸能界に入り、1995年の映画『花より男子』でデビュー。理工学部情報工学科で数学を専攻しながら、同年、テレビドラマでもデビュー。大学卒業後は、NHK大河ドラマ『徳川慶喜』や朝の連続テレビ小説『あすか』を初めとして、『ナースのお仕事』(フジテレビ)『ホタルノヒカリ』(日本テレビ)、映画『20世紀少年〈最終章〉ぼくらの旗』(東宝)など、多くのテレビドラマや映画に出演してこられた。一方で、1999年からは音楽活動も開始。ライブやCDではギターに加えて、ピアノやトランペットも演奏することがあるという多才ぶりを発揮する。
音楽の原点は、高校のときに触れたBOOWY時代の布袋寅泰さんのギターと熱く語る藤木さんに、『おしゃれイズム』収録前の忙しいなか、俳優業15年の足跡と「死ぬまで弾き続ける」というギターへの思いを語っていただいた。
俳優 藤木直人さん
1972年岡山県生まれ。早稲田大学在学中にデビュー後、テレビドラマでは『徳川慶喜』(NHK)など、映画では『劇場版TRICK霊能力者バトルロイヤル』(東宝)など、数多くの作品に出演してきた他、『おしゃれイズム』(日本テレビ)ではレギュラーパーソナリティをつとめ、『冬の絵空』で舞台にも立った。その傍ら、高校時代から熱中してきたギターを中心に音楽活動にも活躍の場を広げている。2004年第27回日本アカデミー賞新人俳優賞『g@me』などの受賞歴がある。
一つひとつのドラマを通して
―― デビューは映画の『花より男子』でしたが、大学4年在学中だったですね。理工系の学部だったようですが、学業との両立は大変ではなかったですか。
高校の時から、こういった芸能の世界にあこがれていたところがあって、大学4年間のうちに何かきっかけがつかめればいいなって考えていたんです。だから、あまり積極的な大学生ではなかったんです(笑)。それで、芸能界という目標にたどり着けたし、大学もやめようかなと思ったんですけど、親や同級生から「卒業だけはしたほうがいい」って言われて、なんとか卒業させてもらいました。
―― その後、本格的に芸能活動に入られるのですが、これまで出演された多くのテレビドラマのなかで、印象に残っているものはありますか。
僕の場合、役者としてちゃんと勉強したこともなかったので、どの作品も僕にとってはすごく大きな意味のあるものだったんです。
―― 一つひとつのドラマなどをやってこられることが、ご自身の血や肉になっていったと。
そういう点では、僕は一歩一歩がすごくゆっくりだったと思います。ただ、NHKの朝の連続テレビ小説のときは制作が大阪NHKだったので、仕事のために半年大阪に行ってというのは感覚も違ったし、ベテランの方たちも多かったですし、より幅広い方に見てもらうチャンスでもあったと思います。
―― NHKでは、大河ドラマ『徳川慶喜』にも出演されていますよね。
大河ドラマは、大変でしたね(笑)。まだ「演技」もわからないし、現場の進行も全然わからないような状態で、それなりに大きな役を与えて下さったんですけど、期待にはあまり答えられなかった気がします。でも、撮影が始まる前に他の役者さん方と一緒に道場で殺陣の稽古をしたり、所作指導を受けて着物や袴での歩き方、座り方などを教わったんです。それは当然、簡単に身につくものではないのですけど、そうやって勉強させてもらうのはすごく新鮮で、ありがたかったです。
―― 映画にも何本か出演されていますが、テレビドラマと映画の違いのようなものは感じますか。
僕はまだ、いわゆる「何々組」というような、生粋の映画人が作るような映画撮影の現場にはほとんどいったことがないんです。そういう映画にも出られるよう、今後がんばっていかなきゃいけないと思っています。
―― 本格的な映画もやってみたいと。
テレビドラマって、どうしても時間に追われるじゃないですか。スケジュールが最初から分きざみで入っていて。でも、一番大事なのは良い作品を撮ることなのだから、そんなこと考えずに、良い作品を撮ることを優先してやれるような創り方でやってみたいという気はあります。
高校のときギターに触れて
―― ところで、野球のイチロー選手のファンだと伺いましたが。
はい。とびぬけた、圧倒的な才能へのあこがれなのかなと思います。それと、常に向上心を持ち続けて体のケアを怠らないというような、ストイックな部分もあこがれますね。一挙手一投足に無駄がないっていう感じがするんです。無駄なものをそぎ落としてたどり着いた、機能美みたいなものを感じますね。
―― ご自分でもそういうところに近づこうと・・・。
イヤイヤ。無理だからあこがれるんです(笑)。
―― ご自身は、俳優業を始められたあと、音楽のジャンルでも活躍されていますね。布袋寅泰さんにあこがれてギターを始められたとか。
もともとBOOWYのファンだったんです。僕自身は音楽にうとかったんですけど、高校1年のとき、双子の兄が解散したBOOWYのライブビデオを借りてきて初めて知ったんです。初めてロックに触れたので、すごく強烈でした。それから兄貴とBOOWYごっこをやってました。テニスラケットをギターの代わりにして(笑)。
―― 初々しい感じですね。
高校2年のときにヘビメタのギターをやっている人がいて、BOOWYの「マリオネット」っていう曲のイントロのリフを弾いてくれたんです。それを聞いたとき「あ、BOOWYと同じだ」と。僕は小学校のときに吹奏楽のトランペットをやったことはあるし、家にピアノもあったんですけど、エレキギターは今までの楽器と全然違うっていう感じを受けたんです。そのあとすぐギターを買って、1日中弾いてる感じでした。まずはBOOWYのコピーから。本当に「ギター小僧」でしたね。そのころは漠然と、「いつかギタリストになりたい」と思ってました。
―― 吹奏楽の楽器などと違う、高校で出会ったギターの魅力は何だったのでしょうか。
それまでの音楽は、学校で習うよう音楽じゃないですか。そうじゃないある種ファッション的な要素であるバンドというものに初めて触れて、興味を持った。そこにつながるツールがギターだったんです。それに、高校生のころって何でも熱中できる時期で、夏休みなんか1日8時間ぐらいギターを弾いてました。弾きすぎて指の先に水ぶくれができ、皮が破れて血が出ても弾いてました。そこまでがんばってやっていくと、表現できることが増えていくのがまた楽しくなったりするんですね。
―― その後は、作曲もされていますが、どういうときに曲ができるのですか。
やっぱり、楽器に触っているときが多いですね。コードを適当に弾いていて、コードに刺激されて思いつくっていうのが一番多いと思います。でも、ドレミファソラシドなんて8音しかなくって、コード進行だってだいたい似ていて、いままでにないものを創りだすのってやっぱり難しいですよね。本当にたまに、パーっと新しいものが見える瞬間があったりすると、気持ちよく曲ができたりします。
ライブと舞台に通じるもの
―― ライブ演奏とスタジオでの録音では、どちらが好きですか。
やっぱりライブですね。ライブならバンドの仲間がいて、どういうふうに創っていこうかという話し合いもあるし、拙いですけど僕もギターを弾かせてもらえますしね(笑)。
―― でも、ライブは大変でしょうね。
大勢の人の前で何かをするというのは、大変です。でも、お芝居もそこが原点だと思うんですよ。テレビドラマだと、視聴者が見ていないところで撮って、それをつないで見てもらって、反応も全然わからないわけですけど、ライブをやると、こういうことが芸能の原点なんだって気づかせてもらえます。2年ほど前に初めての舞台をやらせてもらったときも、音楽のライブに通じる部分がすごくあると感じました。
―― 俳優としてデビューされて15年、音楽活動も10年やっていらっしゃったわけですが、これからもこういうスタイルを続けていこうと考えていらっしゃいますか。
それは、続けたいですけど需要がないとできないですからね(笑)。役者業は何も知らないで入って、気がついたらこんなに長い間やってきて、それなりに現場で思うこともあるようになったので、今後も続けていきたいと思っています。音楽は、やっぱりバンドなんかで音を出すっていうのがすごく好きなんです。ギターを弾くっていうことが、手足の一部みたいな感じです。ギターは死ぬまでやめないですね。需要がなかったら、趣味のバンドになっていくわけですけど(笑)。
―― 需要はこれからますます高まっていくと思いますので、ぜひ音楽も続けていってください。今日はテレビ番組収録前のお忙しいなか、ありがとうございました。
by cmailjp
| 2010-11-09 00:00
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